2023.01.31 ” 絶妙なむぎゅっと感” をもとめて。
ある女性デザイナーの奮闘ストーリー。

パフート(POUFOOT)

レイアウトするだけで雰囲気が変わり、その場を和ませる遊び心満載のスツール「パフート(POUFOOT)」。
リチャージスペースはもちろん、適度なリラックスによって新しいアイデアが期待されるミーティングスペースやコワーキングスペースでも大活躍します。
なんとも可愛らしいパフートですが、その開発の背景には、プロポーション・ハンドル・金具・ステッチなど細部にまでこだわり抜いた女性デザイナーの奮闘がありました。
そこで今回は、そんなパフートにまつわるストーリーをご紹介します。

  • パフート(POUFOOT)
    パフート(POUFOOT)

    きっかけは、工場でのデザインコンペ。
    情緒的な価値の原石をブラッシュアップ。

    パフート誕生につながる最初のきっかけは、アダル総合工場で開催された自社デザインコンペ。53案がエントリーされ、その中にあったのが、若手職人によるユニークなスツールのデザインでした。コンペでは受賞に至らなかったのですが、商品開発メンバーの心の中に、そのデザインの印象がずっと残っていたそうです。

    そしてしばらく経ち、「ワークプレイスに情緒的な価値を」というテーマを掲げる「A.T.I.C」でスツールの開発プロジェクトが進みはじめます。心が躍るようなデザイン・・・自然と気持ちが前向きになるようなデザイン・・・ミーティングを重ねる中で、ハッ!と思い出されたのが、自社デザインコンペでのアイデアでした。
    そこに可能性を見出した開発メンバー達は、その情緒的な価値の原石をブラッシュアップするために動き出します。

  • パフート(POUFOOT)

    座ったときの可愛らしさまで設計。
    ABW仕様のハンドルは、トートバッグがモチーフ。

    開発メンバーで検討を重ねた結果、仕事内容に合わせて働く環境を選んでいく「ABW(Activity Based Working)」の スタイルに対応できるよう、「ハンドル付きで持ち運べるユニークなスツール」という方向性で進めることに決定。
    そしてそこから、デザインのブラッシュアップをメインで担当した女性デザイナーの奮闘が始まりました。

    まず、その特徴的なプロポーションを、さらに可愛らしく、オフィス空間の中で遊び心を象徴する存在になれる次元にまで高めていきたいと思い座面を緩やかに膨らませ、側面の曲線とのバランスを整えるために検証を重ねました。パフート単体での可愛らしさはもちろん、人が座っている状態での見え方も追求。座り心地の安定感は確保しながらも、周りからはパフートがむぎゅっと少し潰れて見えるような、その“絶妙なむぎゅっと感”まで可愛らしく、気持ちが和むデザインを目指しました。

    そしてハンドルも、可愛らしい癒しのデザインアクセントになるよう、トートバッグの取っ手をモチーフに。昨今異素材ミックスをポイントにするというトレンドもあり、本革を選定しています。本革の色は、多様なワークプレイスに合わせられるベーシックなダークブラウンとカジュアルなキャメルを採用。さらに、手仕事の温もりをパフートの世界観に活かすため、あえて革のコバ(裁断面)は仕上げずに一枚革にし、ハンドルの縁にステッチを入れてラフな感じに仕上げるなど、細部にまでこだわり抜いています。

    パフート(POUFOOT)
  • パフート(POUFOOT)
    パフート(POUFOOT)

    世界観を守るビスキャップ探しに奔走。
    張地の切り返しにもこだわり、何度も試作。

    情緒的な価値と機能性を最大限に高めるべく試行錯誤を繰り返していましたが、大きな壁にぶつかります。持ち手としての強度を確保するため、ハンドルを内部の木部にビス固定する必要があり、そうすると開発当初にイメージしていたシンプルな金具は使えず、ビス頭が見える少し不格好なデザインになっていました。
    本革のハンドルをデザインの大きなポイントにしていて、金具は目立たせたくなかった彼女は、ビス頭が見えることにどうしても納得できず、協力会社へイメージ写真を共有しながら、ビス固定した部分を隠せるビスキャップ探しに奔走しました。

    パフート(POUFOOT)

    「サイズや材質が限られていて難しいところもありましたが、協力会社の方々もすごく考えてくださり、理想に近いものを見つけることができました」と当時をふりかえります。

    また、張地の切り返しはトートバッグの底の切り返しをイメージし、目線の高さからバランスの良い配分を模索し続けました。イメージ写真の撮影ではバッグを思わせる配色とビビッドな配色の2パターンを設定し、遊び心を刺激する見せ方を意識しています。

    張地の切り返しの高さバランスやステッチの糸の太さなどを検証するため、工場メンバーに依頼し何度も張り替えて試作。ステッチは、効果的に目立つように通常よりも太い糸でダブルステッチをかける仕様に決まりました。こうしてパフートはカタチになっていきますが、解消しておくべき懸念点がまだ残っていたのです。

  • パフート(POUFOOT)

    “ハイヒール1000回検証”も経て完成。
    ワークスペースに心躍る遊び心を。

    ハイヒールを履いた状態で座った場合、パフートの下の膨らみがヒールで削られて生地が破れるのではないかという懸念点が残っていました。そこで緒方は工場と連携し、実際にハイヒールで1000回削る検証を実施。
    その結果、何の損傷もないことが確認でき、いよいよパフートは完成へと向かいます。

    「パフートのような遊び心のあるユニークな製品は、これまでのアダルのラインナップには少なく、工場の担当者や営業メンバーの評判も良くて嬉しいです。工場のデザインコンペから生まれたということもあり、企画開発と工場の双方が積極的に関わって連携できたと感じています」
    情緒的な価値と機能性を兼ね備えたユニークなスツールが、ワークプレイスのあらゆる場所に、癒しや温もり、心躍る遊び心を運んできます。

    パフート(POUFOOT)
パフート(POUFOOT)

展示会や学会のブースデザイン・設計を経て2019年に入社。
企画開発室にてA.T.I.Cvol.8の商品開発やカタログ業務に携わる。
2022年4月に本社プランニング室へ異動し現在は、カタログ発刊に向けたプロダクトマーケティング業務やADALの過去の特注品を元にコレクション化したBespoke Furniture Collectionの制作を担当する。

趣味は和菓子を眺めることと食べること。中でも練り切りと外郎が大好物。