2024.01.31屋根に秘密あり!家具の枠を超え、
情緒的な価値を備えた“空間”づくり。
ADAL初のパーソナルブース開発で誕生した「ロフコ」。A.T.I.Cブランドとしてのパーソナルブースの価値とは?
従来のパーソナルブースとの違い、一線を画す魅力とは?
家具の枠を超え、情緒的な価値を備えた“空間”づくりに挑んだストーリーです。
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たどり着いたのは、三心アーチ。
情緒的な価値と有効スペースを確保。「ロフコ」の開発は、コロナ禍でパーソナルブースへのニーズが高まっていた2021年にスタートしました。
すでに様々なオフィス家具メーカーがパーソナルブースを販売していたからこそ、A.T.I.Cならではの情緒的な価値を備えたパーソナルブースとは何かを徹底的に追求し、昨今の多様なワークスペースに合わせやすいコーディネート性で差別化していくことを決断。柔らかな印象の丸みあるフォルムで空間に馴染みやすく可愛らしいデザイン、さらに張地の色を空間に合わせて選べるところも特徴です。パーソナルブースの開発は初めての試みであったものの、もともと携帯電話での通話用に三角屋根のモバイルフォンブースが製品化されていたため、最初はそのモバイルフォンブースのデザインをパーソナルブースに展開することも考え、CGで検証していました。
しかし、三角屋根をそのままパーソナルブースの形状にすると存在感・異質感が際立ちすぎてしまい、企画当初から目指しているコーディネート性の高さを叶えることはできないと判断。そうして、また新たなデザインを模索する中でたどり着いたのが、三心アーチでした。
家具デザインのトレンドでもあり、空間と調和しやすい「丸み」を採用。ただ、丸みということで半円にすると、それはそれで規則正しく堅苦しい印象になってしまい、求めている調和しやすさは得られませんでした。そこで、様々な「丸み」を検討し、西欧建築のデザインから導き出したのが、三心アーチです。
三心アーチのデザインによって、多様なワークスペースと調和し情緒的な価値を生み出せることはもちろん、半円と比べブース内部の天井高を確保できるので、有効スペースの確保にもつながっています。
寸法は、快適性と運搬しやすさを重視して決定。
照明や金具の課題もクリアして守り抜く価値。サイズの大きなパーソナルブースの開発においては、運搬のしやすさも重要でした。当初はノックダウン(パーツで出荷して現場で組み立てる方式)を検討していましたが、「ロフコ」は組み立ての難易度が高いため、全ての現場に組み立てられる営業スタッフが同行することになるだろうと予想され、それは物理的に難しいので、ノックダウンではなく、完成形で運搬しやすい寸法を模索。
あまりにコンパクトにすると内部のスペースが狭くなり窮屈になるため、一般的なエレベーターでは運べないものの、商業施設のエレベーターの場合は運搬可能な寸法に設定し、ブース内部の快適性と運搬しやすさを両立させています。
また、張地が選べるからこその課題も発生しました。ブース内部の天井に下向きのLED照明を設置していたところ、張地の色が暗めの場合は内部全体も暗くなってしまうことが判明したのです。しかし、ただ単に照明の明るさを上げるだけでは、光が強すぎて快適ではありません。そこで、下方向だけでなく3つの方向に光が出るLED照明へ変更。そうすることで、全方向に光が拡散し、張地の色に関係なく柔らかな明るさの中で快適に過ごせるようになり、オンラインミーティング時のカメラ映えも好評で、より良い結果につながりました。
さらに、固定金具としてのL型アングルにもこだわっています。一般的なL型アングルを採用してしまうと急に業務用感が強くなり、情緒的な価値が損なわれるので、機能面だけでなくデザイン的にもフィットするL型アングルを探し求めました。金物メーカーのカタログをはじめ、直接問い合わせて相談を重ねるなどして、白くて丸みのあるアングルを採用しています。
そしてもちろん、パーソナルブースに必須の遮音性も確保しています。ブース上部には吸音ウレタンを使い、その音レベルは静かな図書館の中と同等です。外からの音に影響されないだけでなく、ブース内部の音を外側に漏らさないための検証も重ねています。
企画開発への姿勢を変えるほどの経験。
現在は、ロータイプをブラッシュアップ。「ADALにとってもパーソナルブースの開発は初めてだったので、誰も経験したことのない状態からスタートしました。そのため、企画当初の段階では、どのような確認事項や懸念事項が出てくるのか想像しづらかったですね。ADAL家具の中で最大サイズの商品で、途中から消防法関連の確認事項も発生し、消防署に図面を何度か持参して確認していただいたこともあります」とふり返るのは、企画開発を担当した白水。
「エレベーターの規格について調査したのも初めての経験でした。結果的に一般的なエレベーターでの運搬は難しかったのですが、商業施設のエレベーターであれば運べるように設計できました。また、張地を選べるというのは、ADALの中ではベーシックなことなので、最初から選んでいただけるようにはしていたのですが、2022年のオルガテック東京に出展した際、色を選べることに驚きと感激のお声を何度もいただいて、張地を選べるということの魅力を再確信できたのもよかったです」と語ります。
現在は、通常サイズの一般的なエレベーターでも運搬可能な「ロータイプ」の本格販売を目指して準備中。2023年のオルガテック東京にてプロトタイプを展示したところ非常に好評だったため、ブラッシュアップを重ねながら、次のカタログ掲載に向けて動いています。
「社内でも初めてのパーソナルブース開発に取り組めたことで、また新たな経験値を手にでき、その後の商品開発に活かせていると感じます。まず、確認事項や懸念事項など開発に必要な要素の洗い出しをするようになり、大体の見通しが立てられるようになり、よりスムーズに進めていけるようになりました」と白水。商品名の「ロフコ」は、「遮断する」という意味のフィンランド語に由来しています。「商品の特性に合致しているだけでなく、可愛らしい響きで丸みを帯びたデザインとも雰囲気が合っているので、愛着をもっていただけると嬉しいですね」と微笑みます。
A.T.I.Cとしてのパーソナルブースとは?情緒的な価値を生み出すためにできることとは?細部まで徹底して考え抜きこだわり抜いて完成した「ロフコ」、昨今の多様なワークプレイス空間で幅広くお役に立てることを願っています。
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企画開発室
白水 亮佑
建築金物のメーカーにて建築金物や家具のデザイン・設計を経て2018年にアダルに入社。 現在は企画開発室にて家具の商品開発、カタログ制作業務に携わる。3DプリンターやCGなど3Dを活用した商品開発を率先して行っている。
家では植物に囲まれながら生活し、週末はサウナで心身ともに整えている。