2023.12.27開発断念からの復活!
緻密な工夫で、
情緒的な価値を備えた
モジュラーソファへ。
これまでのオフィス用モジュラーソファとは一線を画すデザインで、リチャージや高集中に適したリラックスをもたらす「コトナ」。そのボリューム感とラフ感に癒されますが、開発までの道のりは険しいものでした。
そこで今回は、一時は開発断念にまで至った「コトナ」が誕生するまでの物語をご紹介します。
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実現したい機能に、迫る期限。
苦渋の決断後、開けた視界。「コトナ」の開発は、ABWの浸透によってリチャージや高集中向けのパネル付きソファへのニーズが高まっていたことがきっかけです。
そこで、競合商品との差別化ポイントのひとつとして企画されたのが、「パネルを自在に取り外しできる機能」でした。その機能を実現できれば、競合商品との大きな差別化につながります。しかし、開発の期限が迫っていたため、どんなに急いでもパネル取り外し機能は諦めざるをえないことが判明。競合との大きな差別化ポイントが実現できない、競合優位性が見出せない・・・というショックの中で、開発メイン担当の緒方は、開発そのものを断念する苦渋の決断に至ります。
パネル付きソファへのニーズの高さを感じ、本当は開発したいという想いを抱えながらも、開発ストップについて工場の担当者に伝えました。すると、ここで「コトナ」の運命が大きく動きます。
「ニーズがあると感じるのなら、やった方がいい。ひとつの機能ができないから全部を諦めるのではなく、できる範囲でやれるだけやろう。必ず期限までに間に合うよう、全力でバックアップするので」という言葉が、工場担当者から返ってきたのです。そして、その心強い言葉をきっかけに、本当は開発を続けたい気持ちが溢れ出しました。機能で競合商品との差別化を図ることは現段階では難しい。その代わりに、デザインや座り心地は限られた時間の中でとことん突き詰めようと決めました。
視界が一気に開けていくようでした。もうその熱は止まることなく、そのまますぐにプロジェクトの復活を申請し、「コトナ」開発が再びスタートしたのです。
リラックスのための意匠性にこだわり、
ボリューム感とラフな印象を実現。「コトナ」はフィンランド語で「家」に該当し、「気楽に過ごしてね」や「アットホーム」に近い意味をもちます。そして、その名に込めた想いを具現化するため、温かみがあって癒されるボリューム感やラフな印象にこだわったデザインが特徴的です。
ウレタンを贅沢に使用した厚めのクッションで、肘も背と同じ曲線を描くことにより、ボリューム感アップ。アクセントのパイピングを太めにし、フレームのように機能させ、背や肘の丸みを際立たせています。また、背・肘・座面のコーナーにギャザーを入れ、あえてシワ感を出すことでラフな印象に。
さらに、パーティションの役割を果たすパネルは、後ろから見た際に壁のような圧迫感を与えがちですが、ボタン締めデザインにして意匠性を高め、壁感を払拭して柔らかな雰囲気を実現しています。ワーク利用に特化したテーブル「スウィンワーク」の一次試作も並行して進め、オンラインミーティング時のPCの位置まで考慮しながら、座面と天板の高さを調整。三方がパネルで囲まれたワンシーターと合わせれば、あっという間に高集中ブースが完成します。
展開パターンを考慮して調整を重ね、
撮影の準備でも工場担当者と試行錯誤。「コトナ」はモジュラーソファなので、展開パターンの多さが特徴で、それは開発の難易度を上げる要因でもあります。組み方やサイズを考案するにあたり、あらゆるメーカーのモジュラーソファを調査。サイズ・形状・内部の構造パターンをパーツごとに考えていかなければなりません。パネルもハイタイプとロータイプで2種類あり、ハイパネルタイプ・ローパネルタイプ・パネル無しタイプを自在に組み合わせられるよう設計していきます。
背と肘どちらも同じ曲線を描き、ふんわりしたボリューム感にこだわったデザインだからこその難しさも出てきました。どちらのクッションも丸みがあるので、組み合わせ方によっては隙間ができてしまうのです。特にパネル無しのときは隙間が目立ち、意匠性が損なわれるため対策が必要で、壁に原寸の断面図を貼りながら、背と肘のウレタンの種類を調整し、隙間が発生しない最適な回答を導き出していきました。
モジュール式を熟知した工場担当者からの提案やアドバイスを受けて調整し、図面に反映させていく日々。図面だけで表現できないところは、撮影した写真をもとにミリ単位で調整を重ねていきました。
「木部とウレタン、背と肘と座面が連動しているので、一部を調整すると違う箇所にズレが発生し、それが他の展開パターンにも影響します。連動を考えながら、細かな調整を繰り返していくことが難しかったですね」と語る緒方。展開パターンが無数に考えられるため、その中のどのパターンで撮影するべきなのか、撮影にあたってどのパーツを揃える必要があるのかを導き出すのにも時間を要しました。通常は商品の撮影に工場担当者は立ち会いませんが、「コトナ」に関しては撮影にも参加。プロジェクト復活時の言葉通り、全力でサポートしながら、開発期限に向けて試行錯誤を重ねていきました。
緻密な温かみ・柔らかさ・遊び心で、
一線を画す情緒的な価値へ。緒方にとってモジュール式の商品開発は初めての試みでした。「リチャージのシーン、高集中のシーンにおける様々なレイアウトを想定したときに、無数の組み合わせパターンが考えられられますが、モジュール寸法を設計するためには、それらの最大公約数的な考え方が必要とされます。当初はその難しさに悩むことも多かったですが、だからこそ成長できたと感じています。工場担当者から本当に細やかなところまで教えてもらいながら進行し、一気に色々なことを覚えましたね(笑)とても密度の濃い時間でした」とふり返ります。
「オフィス家具メーカーのモジュラーソファは、非常に機能的で使いやすさが追求されていますが、堅い印象のデザインが多いと感じていました。もっと遊び心や温かみがあり、リラックスできるモジュラーソファを開発したいと思っていたんです。気持ちが和んで気楽に過ごせて、すごく大変なときや慌ただしいときでも、座ればほっと落ち着けるようなモジュラーソファをイメージして開発しました。リチャージや高集中、オンラインミーティングに役立てていただきたいです」
競合商品との大きな差別化ポイントのひとつを諦めなければならなかったことで、一時は開発そのものを断念という結論にまで至ったものの、A.T.I.C 8の根幹にある「情緒的な価値」を追求することにより、一線を画すことに成功した「コトナ」。これまでに「パフート」「ポルボ」「ハング」をはじめとするA.T.I.C商品の開発で発揮され培われてきた彼女ならではの繊細な感性が、従来のオフィス向けモジュラーソファにはない魅力につながっています。
そのディテールや座り心地の良さは、カタログ写真だけでは分かりません。「コトナ」には現物を目にして触れることにより伝わる価値が多くあるため、ぜひショールームで違いをご体感ください。
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展示会や学会のブースデザイン・設計を経て2019年に入社。
企画開発室にてA.T.I.Cvol.8の商品開発やカタログ業務に携わる。
2022年4月に本社プランニング室へ異動し現在は、カタログ発刊に向けたプロダクトマーケティング業務やADALの過去の特注品を元にコレクション化したBespoke Furniture Collectionの制作を担当する。
趣味は和菓子を眺めることと食べること。中でも練り切りと外郎が大好物。