急激な変化によって訪れた飲食業界の困難な状況下でも、変わらぬ美味しさを届けながら新たな挑戦を行い、愛され続ける場所。「うまかもん」の宝庫・福岡で、地域になくてはならない「ソウルフード」として親しまれてきたお店のリアルな現在地を、トップインタビューを通してご紹介します。
ソウルフードの原点に立ち続け、新しい風を起こしていく。

福岡・博多のソウルフード「もつ鍋」の元祖が、創業45年の「楽天地」である。小腸だけのもつ鍋店が多い中で、6種類の新鮮なモツをミックスしてニラ山盛りという伝統的なスタイルを貫き、メニューはなんと、もつ鍋のみ。ヘルシーで財布にやさしくお腹いっぱいになる醤油ベースのもつ鍋は、福岡中の胃袋をわしづかみにしてきた。
そんなソウルフードの番人は、コロナ禍であっても突き進み、2021年に4店舗をオープン。その中の1店舗が「天神アクロス店」改め「天神 新本店」だ。創業時の本店が2022年に移転し、新たに構えたその店内の空間デザインは、シンプルでスタイリッシュ。木の温かみが心地いいテーブルも、カフェテーブルのような柔らかな雰囲気で空間に馴染む。
昔懐かしい昭和の面影が残る従来の店舗とはまた違う魅力を放つ新店。もつ鍋という食文化を守りながらも、新しい時代のニーズをとらえ、新しい風を巻き起こしていく。

有限会社 楽天地
代表取締役社長 水谷 崇
とにかく歩みを止めないこと。守りながらも、時代のニーズに合わせて攻める。福岡の名物であり続けることが使命。
原点を守りながら多様化するニーズに対応

「楽天地」では、6種類の新鮮なモツを使ったミックスで、ニラが山盛りという伝統のもつ鍋スタイルを創業時から貫いています。創業者である父に「メニューは、いっさい増やすな!」と言われて心がしびれ、>醤油ベースのもつ鍋のみで勝負するもつ鍋専門店です。
最高に美味しいもつ鍋をお腹いっぱい食べていただくために守り続けているこだわりであり、それが何度も来店していただける理由だと思うので、今後も変わることなく貫いていきます。ただ、やはり時代は移り変わっていくもので、そのときどきの時代のニーズに応えることも非常に重要です。その取り組みの一つとして例を挙げると、多様化する食の好みへのニーズに寄り添えるよう、新しく「プチ味変」の楽しみを取り入れました。柚子・明太子・パクチー黒胡椒など、様々な種類の調味料を揃えたコーナーを設置し、「プチ味変」を自由にお楽しみいただける工夫をしています。

一致団結して新規出店。苦境でも立ち止まらない。
2021年には4店舗の新規出店に挑戦しました。コロナ禍でリスクもありましたが、中断は考えていませんでした。スタッフ皆に気持ちを伝えて真剣に話し合い、これまで以上に一致団結できたように思います。

実はもつ鍋店は、ニオイの関係で出店をお断りされて場所がなかなか決まらない・・・という事態になることが多いのですが、コロナ禍で新規出店する飲食店が激減しているため、私たちにとってはリスクがあったとしても出店すべきタイミングだったと言えます。
特製暖簾に「志」の意味。令和版の旗艦店へ。
天神の中心部に位置する「天神 新本店」の出店は、「天神 旧本店」と並ぶくらい、もしくは超えるくらいの「令和版の旗艦店」をつくるという意気込みで臨みました。
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真ん中の天の字が大きく印象的な暖簾も特製でつくり、「もつ」とも読める天の字には、志の意味を込めています。この暖簾を旗として掲げながら時代の荒波を乗り越え、ここからまた、もつ鍋の食文化を盛り上げていきたいです。
旧本店時代からの信頼で、30年後を見据え家具選定。
「天神 旧本店」のテーブルはアダルさんのテーブルで、30年以上も活躍してくれました。本当に丈夫で安心。だから「天神 新本店」の家具も、必ずアダルさんにお願いしようと決めていました。また新たな30年を一緒に過ごしていきます。

これからは良いことばかりと信じて、福岡の飲食を盛り上げていきたい。目指しているのは、世界のもつ鍋王!
医療従事者の方々への感謝の気持ちがより強く。
父の入退院を機に医療従事者の方々への感謝の気持ちが強くなり、いつかご恩をお返ししたいと考えるようになりました。そこで色々と模索し、飲食代全額無料サービスにたどり着きます。周囲からは驚かれましたが、やはり中断は考えず、2021年6月に医療従事者の方々を対象とした飲食代全額無料サービスを実施しました。

市内8店舗で実施したところ、SNSなどで口コミが広がり、最終的には約5500人もの方々がご来店くださいました。数字の面だけで言えば赤字ですが、たくさんの方々に喜んでいただけて本当によかったです。
反響の大きさに、驚きと感謝。社会貢献への意識に変化。
この取り組みを知った学生時代の同級生達から、「よくやった」と連絡をもらう機会が多くあり、反響の大きさに驚きました。メディア取材や講演の依頼も増えました。
さらにその後、医療従事者の方々が推薦してくださったということで、なんと全国放送のテレビ番組で、「楽天地」のもつ鍋セットがお取り寄せグルメとして紹介されるという出来事もありました。この時の反響も凄まじいもので、大変な状況の中で気にかけてくださったことに、感謝の気持ちでいっぱいです。
私自身、この取り組みを行ったことで、意識が大きく変わりました。もっともっと社会貢献をしていきたい、少しでも多くの方々の役に立ちたいという想いが強くなり、視野が広がったと感じています。
ニラの水耕栽培に挑戦。安定的な仕入れの実現へ。
また新たな挑戦として、ニラの水耕栽培を計画中です。水耕栽培とは土を使わずに水と液体肥料で育てる方法のことで、屋外と遮断した室内にて、温度・湿度・光量・液体肥料の量などをデータ管理しながら、野菜を育てるのに最適な状態を保ちます。液体肥料を衛生的に管理することで、農薬を使わなくても健康的な野菜を栽培でき、季節に関係なく収穫できます。

山盛りのニラが「楽天地」のもつ鍋の特徴の一つなので、自社管理での水耕栽培によって毎月収穫できるようになれば、仕入れの安定につながります。しっかりとカタチにし、ずっと本気で目指し続けている「世界のもつ鍋王」に近づいていきたいです。
応援していただけるのは、名物であり続けているから。
1977年の創業時から、こんなにも長く応援し続けていただける理由は、福岡の名物であり続けているからだと思っています。
父の言葉の中で印象的なものの一つが、「たかがもつ鍋、されどもつ鍋」です。一生懸命に鍋をつくりながら、よくつぶやいていました。たかがもつ鍋かもしれないけれど、徹底的に追求して極めていけば、その美味しさがクセになって、たくさんの人たちが再び来店してくださるという意味だと解釈しています。
コロナ禍の前と比べれば、観光客の方々のご来店が減って、売り上げも減って苦しいところもありますが、それでも応援してくださる皆様のおかげで、今日も元気にもつ鍋をお届けできています!きっとこれからは良いことばかり!今後もソウルフードの番人、もつ鍋の番人として挑戦を続け、飲食業界の盛り上げにもつなげていきたいです。

元祖もつ鍋楽天地 天神 新本店
住所/福岡県福岡市中央区天神1丁目1-1 アクロス福岡 地下2階
電話/092-741-2746
納入商品/特注テーブル、特注ベンチ