コロナ禍で飲食業界全体が困難に直面している今、以前に掲載させていただいた愛され続ける老舗店の皆様に、改めてお話を伺いました。目まぐるしい変化との向き合い方、新たな取り組み、変わらず大切にしていること。追加インタビュー分も含めた再編集版で、どんな時代も愛される名店の現在地をお届けします。
片手鍋の独自製法で唯一無二の味わい。どんな状況でも変わらない居心地を。
レトロな雰囲気と異国情緒。片手鍋を使った癒しの一杯。
片手鍋を使った独自製法でたてる唯一無二のコーヒー。蒸らしは砂時計できっちり3分間、最も美味しく飲める温度よりも少しだけ高い温度でテーブルへ。
先代が博多の本店から暖簾分けで開いた久留米店を、その先代のもとで修行した2代目マスターの中野成俊さんが引き継いだ。本店の味を守り続け、なんと創業60年。ハヤシライスや厚切りピザトーストなど、中野さんお手製メニューのファンも多い。
昔ながらのレトロと異国情緒が重なり合う店内の独特の雰囲気も特徴。コーヒー同様、様々なものが大切に受け継がれていて、アダルの前身「イスヤ商会」のシールが貼られたイスもそのひとつ。40年ほど前から「ばんぢろ」の一員としてお客様を出迎えてきた。
「何か考えたいときや迷ったとき、マスターのコーヒーを飲めば落ち着く」と語る常連客。いつも待っていてくれる場所、人生に必要な1杯が、ここにある。
窮屈な雰囲気にならないよう、これまでの居心地を守る。美味しいコーヒーをベストタイミングで届け続けるのみ。
昨今の社会の目まぐるしい変化にあたり、店主へインタビューを実施。
「現在のコロナ禍という状況、何としても乗り越えなければならないと強く思っていますが、コロナ禍だからといって何かを変えるといったようなことは特にしていません。マスク着用徹底のお願いや消毒など必要な対策は行いながらも、感染拡大防止を意識しすぎて逆に窮屈な空間にならないように、これまでの雰囲気が変わってしまわないように気をつけています」と中野さん。
コロナ禍であっても、大切にしていることは変わらない。「美味しいコーヒーを淹れることと、お客様をお待たせしないことですね」と微笑む。どんな状況でも、「ばんぢろ」ならではの居心地を守るために工夫を重ね続ける。そして多くの人が、その場所に引き寄せられていく。
お店を変わらず開け続ける意味。心のよりどころを、ずっと。
最後に、これからに向けてのメッセージをいただいた。
「社会全体が大変な状況で、様々な変化が起こっていますが、この空間は変えずに守り続けたいですね。すごく落ち着ける、コーヒーが美味しいなど、お客様からの言葉が励みです。新しく何かを始めるというよりは、これまでと変わらず幅広い世代のお客様に愛していただける美味しいコーヒーをご提供し続けることが目標であり、役割だと思っています」
コーヒーの店 ばんぢろ
住所/ 福岡県久留米市六ツ門町22-34
電話/0954-32-0756