長崎の路線バス会社である長崎自動車が運営する「みらい長崎ココウォーク」。かつて、地元の人々に愛されていた「福田の長崎遊園地(1996年閉園)」が届けた夢の時間を、現代に合わせたかたちで、再びワクワクしてもらいたいという想いで誕生した。「みらい長崎ココウォーク」の空間デザインは、長崎ならではの和華蘭文化の魅力を詰め込んだものになっている

館内のいたるところに、ランタンや離島、中華街など、長崎の特色をイメージしたデザインが施されている。吹き抜けの広い空間に、大きな弧を描くこのソファもまた、古くから外国への玄関口として発展してきた港湾都市である「長崎の波」をイメージしたもの。島々の間を縫って進む、何隻もの船。それによって生み出される豪快な波の上をクルーザーで冒険しているようなシーンをイメージして、このユニークなフォルムが生まれた。

しかし、このソファを完成させるのは簡単ではなかった。例えば、フレーム製作において、ジョイント部分に少しでもズレがあると、アールの先では大きな誤差となってしまう。1台なら多少の誤差は気にならないが、2台となると、形をぴったりそろえるのが非常に困難なのだ。同様に、フレーム上にカーブベニヤで下地を作るときも、やはり3次曲線のため、細かな調整が必要とされた。この3次元にひねるフレームに苦戦しながらも、多くの職人たちが、それぞれの知識や経験、応用力を駆使し、工程ごとに試行錯誤を重ねて、この美しい曲線のフォルムに辿り着いたのだ。

先に述べたように、「みらい長崎ココウォーク」には、人々を楽しませようとする気持ちや、地元長崎への愛情が、館内全体の空間デザインにアウトプットされている。取材をしていると、設計者がデザインした〝オーナーの想い〟が、職人まできちんと届いていることに気がつく。だからこそ、どの工程においても妥協がなく、全精力をかけられるのだ。

このソファは子どもがたちに大人気だそうだ。円をくぐったり、滑ってみたり、子どもが遊んでいてくれれば、親はゆっくり休憩できる。〝お買い物中の休憩スペース〟というだけなら既製品で十分だが、そこに〝楽しさ〟をプラスするためには、やはりオーダーメイドでないと実現しえなかったのだと思う。

みらい長崎ココウォーク/スパイラルソファ
長崎県長崎市茂里町1-55