歴史あるホテル客室への設置に向け、名栗模様をパネルで再現。
2023年6月に創業150周年を迎えた「日光金谷ホテル」の別館リニューアルにともない、世界に一つだけのクローゼット・ミニバーが誕生した。
伝統的な様式を継承した客室にふさわしく、その腰部分には「名栗(なぐり)」の模様が施されている。名栗とは、日本建築における古くからの加工技術のこと。大工道具で木の表面を削り、独特の削り痕を残すことで意匠性を高めたものが、名栗加工と呼ばれる。今回のプロジェクトでは、ホテルの客室への設置で量産が必要だったため、予算を考慮した上でパネルという手段が適切と判断し、美しく趣のある名栗の模様を再現することに挑戦した。
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美しく味わい深い名栗模様へ!試行錯誤の3大ポイント
【ポイント1】名栗断面の角がしっかり立つように
縮尺を変えるなどして数種類のパネルを試すものの、名栗断面の角が丸くなってしまい、名栗ならではの味わいを出せずに試行錯誤。しっかりと断面の角を立たせたデザインで仕上げられるように追求した。
【ポイント2】名栗模様が美しくつながるように
「両開きで扉が左右に分かれる場合も、閉じた状態のときは模様がつながって見えるよう、美しく仕上げてほしい」というご要望に応えるため、パネルカットの最適な割り付けも検討を重ねて導き出した。
【ポイント3】塗装は3パターン提案
塗装部分に関しても、淡い色・標準・濃い色という3パターンの塗装サンプルを提案するなど細部にまでこだわり、理想的な色味に仕上げている。
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図面だけでは共有が難しい要素まで深堀りして完成
製作当初、社内で図面化を進めるものの、これまでにないクローゼット・ミニバーということもあり、細やかなオーダーのイメージを共有することに難航。寸法と素材が記載された図面だけでは立体としての仕様を細部まで理解することが難しく、不明点が出ては確認して検討し、解決しながら次の段階へ・・・という流れを繰り返し、プロジェクトメンバー間での理解を深めていくことで完成へと至った。
和と洋が融合した唯一無二のクラシックが誘う「時間旅行」へ。世界で一つの名栗デザイン家具が、ずっと寄り添い続けていく。
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日光金谷ホテル
住所/栃木県日光市上鉢石町1300
電話/0288-54-0001
納入商品/客室家具一式
担当/東京支店 第1グループ第2チーム 茂藤泰輝
作図担当/東京プランニング室 大塚美空