事務所の移転は同時に進めなければならないことが多く、何から手をつければいいのか・・・となってしまいがちです。
通常の業務を行いながら、無駄なコストや労力をかけないよう、事務所移転という一大プロジェクトを成功させるためには、漏れのない完璧な事前計画が必須!そこで、準備の時期ごとに、どの段階で何をすべきかを解説していきます。
また、移転の理由・目的を明確にし、移転後のビジョンを会社全体で共有しておくことも非常に重要です。それこそが、移転成功の土台とも言えます。
それでは、事務所移転の丸わかり解説、ぜひご覧ください!

まずは事務所移転のメリット・デメリット

移転の価値!5大メリット

1.社員のモチベーションアップ

新しくて快適な事務所は、社員のモチベーションを高め、パフォーマンスの向上にもつながります。

2.「ABW」導入のきっかけに

事務所移転をすることで、新しい働き方のひとつとして注目を集める「ABW(アクティビティベースドワーキング)」導入のきっかけにもなります。
「ABW」とは、固定の席を設定せず、ワーカーそれぞれの活動内容(アクティビティ)に合わせて最大のパフォーマンスを発揮できる環境(場所や時間)を選び働けるワークスタイル戦略です。
一人で集中したいとき、気軽に打ち合わせがしたいとき、休憩してリラックスしたいときなど、活動内容に応じた環境が構築されているため、パフォーマンスの向上につながります。

3.コスト削減

事務所移転によって「ABW」ヘスムーズに移行できれば、コンパクトなオフィス設計につながり、省スペース化によるコスト削減も可能です。備品なども厳選することができ、従来のオフィスで発生していた様々なコストを削減できます。

4.通勤時間の短縮、交通費の削減

アクセスの良い便利な場所へ移転すれば、通勤時間が短くなる社員が増える可能性が高く、会社にとっては交通費の削減になります。

5.リクルートへの効果

新しくて快適性・デザイン性に優れた事務所は、リクルートにおいても大きな効果を発揮します。また、事務所そのものはもちろん、働きやすい環境づくりに注力している企業姿勢がとても魅力的であるため、優秀な人材が集まりやすくなります。

移転のデメリットは大きく3つ

1.移転コストの発生

まずは何と言っても、大きな移転費用です。引っ越し代だけでなく、新しく揃える備品代や名刺・パンフレットなどの各種ツールに掲載している住所の変更にともなう印刷費、さらには立地の良い場所へ移転する場合は従来よりも高くなった賃貸料・・・こういった様々なコストが発生したとしても、それよりもっと大きな価値を生み出すことができ、会社の成長を後押しする事務所移転へとつなげていきましょう。

2.手間がかかる

詳しくは後ほどお伝えしていきますが、事務所の移転には半年ほどの期間が必要で、やるべきことも数多く複雑です。どのタイミングで何をしなければならないのか。いくつもの物事が同時に走る非常に手間のかかるプロジェクトです。そのため、しっかりとした事前の計画、そして計画を効率良くスムーズに進めていくことが求められます。

3.不満が出る可能性

働き方や働く環境に対する考えは様々なので、移転の必要はない、なぜ移転するのかと疑問に感じる社員が出てくる可能性があります。また、移転する場所によっては通勤しづらくなる社員が出てくることも考えられ、その場合も不満を生みやすいです。
事務所移転をすることで雰囲気が悪くなっては本末転倒。事前にアンケートを実施するなどして様々な方向から意見を取り入れ、移転後のビジョンを明確にし、事務所移転の理由・価値を全社員にきちんと伝えていきましょう。

事務所移転にかかる期間は?
移転スケジュール&成功ポイント

準備期間は、基本的に半年は必要!

事務所移転のスケジュールは、どんなに短くても3ヵ月、基本的には6ヵ月程度の準備期間を想定して組み立てていきます。それぞれの企業の規模にもよるため、あくまでも目安ですが、6ヵ月は見込んでいた方が慌てることなく安心です。
事務所を退去する予定の日から逆算して組み立てていきましょう。

【6〜5ヵ月前:事務所移転の目的を深掘りして明確化】

計画を立てる際、まず大切なのは、事務所移転の目的を明確にすることです。
社員数が増えて広いスペースが必要になった、交通の便が良く出社・来社しやすい場所に移りたい、新しい事業を始めるため心機一転で環境を変えたいなどはもちろん、移転先の事務所で実現したい働き方や業務フローを含めた移転後の理想のワークスタイルまで深掘りして鮮明にしておくことがポイントです。
現環境での課題と移転後の働き方まで考えておくことで準備に必要な選択肢・判断基準が見えてきて、新しい事務所での快適性や生産性、そして社員満足度が格段に上がり、事務所移転の効果を最大化できます。

【6〜5ヵ月前:要件を整理】

事務所移転の目的を明確にした後は、その目的達成のためにベストな要件をまとめます。
移転完了したい時期に関しては、移転先で必要な各種工事(LAN工事・内装工事・電気工事など)の期間や家具搬入日も考慮して設定しておくと安心です。また、できる限り通常の業務に影響が出ない時期を選んで進めていきましょう。

《整理しておくべき要件》
・具体的な予算
・移転完了したい時期
・移転対象人数
・確保したい広さ
・会議室の部屋数
・パソコンや複合機などの設置数
・立地
・近隣の環境(飲食店や公共機関があるか等)
・駐車場

【6〜5ヵ月前:現事務所の解約予約・原状回復の確認】

事務所移転の6ヵ月前には、現事務所の解約予約と原状回復の確認(期間・コスト)を行っておきます。特にオフィスビルの場合は、6ヵ月以上前でなければ解約が成立しないケース、解約料が発生するケースが多いので注意が必要です。
また、壁・天井・床などの原状回復工事は契約期間中に実施しなければならないということも、あらかじめ想定して進めていきます。引っ越しの5ヵ月前までには、原状回復工事の業者選定も完了しているのが理想です。原状回復工事に関して特約条項などはなかったかも含め、現事務所の契約書を改めて細かく確認しておきましょう。

【6〜5ヵ月前:物件調査&新事務所の決定】

現事務所の解約予約と原状回復に関する確認を済ませた後は、いよいよ新しい物件調査に入ります。事前に整理した要件をふまえ、まずはインターネットから情報を入手。仲介業者や不動産会社のホームページを中心に下調べです。
そして、実際に足を運んで現地を比較し、事務所移転の想定日から5ヵ月前までには新しい物件を決定・契約しておきましょう。
契約年数・入居可能日・フリーレント期間(最初の数ヵ月の賃料無料期間)の有無・共益費・敷金の返金についてなど、細部までしっかりと把握し、後からの問題発生を防ぎます。

【5〜4ヵ月前:新デザイン・レイアウトの決定】

移転先のフロアに合わせ、レイアウトを決めていきます。
家具や複合機などはもちろん、LAN設備の配置計画や書類の収納計画も一緒にしておくことがポイントです。引っ越しの4ヵ月前までを目安に、レイアウトを決定しておきましょう。

【4〜3ヵ月前:家具什器の手配】

デザイン・レイアウトの決定後に家具什器の手配を始めます。
現事務所から運び込むもの、廃棄するもの、新しく購入するものをリストアップして効率良く漏れなく進めていきましょう。

【4〜3ヵ月前:関連工事業者に依頼】

新事務所でのLAN通信工事・内装工事・電気工事などを依頼する業者を決めます。
工事の内容によっては、物件の管理会社が業者を指定している場合があるので、管理会社にも事前に確認を。

【4〜3ヵ月前:引越し業者の選定】

事務所移転の3ヵ月前までには、引越し業者も決めておきたいところです。
コストを抑えるため、複数の業者への見積もり依頼をオススメします。
ただ、コストを抑えることも大切ですが、金額だけでなく、どこまで対応してもらえるのか、あるいは対応不可なのかまでしっかりと把握して決めることが重要です。

【4〜3ヵ月前:社員全体で情報共有・説明会開催】

移転後のレイアウト・パソコンなどの移動方法・引越しの作業スケジュールといった必要事項はもちろん、新オフィスのコンセプトや目指している働き方を会社全体で共有しておくことが非常に重要です。
そのため、必要事項が決定していれば、4ヵ月より前でもかまわないので、全体的な社員説明会の実施をオススメします。
また、引越しにともなって起こりえそうなトラブルを事前に抽出し、実際にそのトラブルが起きた際、どこの誰に連絡するべきかの窓口まで共有しておくと安心です。

【3〜2ヵ月前:事務所移転の挨拶状の作成】

直前になって思い出しがちなのが、移転の挨拶状です。慌てることがないよう、引越しの3ヵ月前には準備をはじめ、送付先リストの作成や発送時期の検討なども行っておきます。

【3〜2ヵ月前:取引銀行への届け出】

銀行口座やクレジットカードの登録内容の変更を行います。現在は窓口だけでなく各銀行のwebサイトで手続きができる場合も多く便利です。ただ、登記事項証明書や社印など必要な準備物があるため、早めに確認して揃えておきます。

【2〜1ヵ月前:電話機・コピー機などの移設手配】

引越し2ヵ月前には、電話機(電話回線)やコピー機などの移設手配を始めます。
特に電話番号が変更になる場合は、関係各社への連絡や印刷物の記載事項の修正も必要なので、漏れがないように慎重に進めていきましょう。
コピー機やFAXがリースの場合は、移転後もリースを継続するかどうかの検討も必要です。

【2〜1ヵ月前:印刷物・ゴム印・ホームページ記載事項の変更】

事務所移転の住所変更にともない、名刺・封筒・ゴム印なども新しい内容に変える必要があるため、早めに対応していきます。ホームページ内の変更は意外と見落とされがちなので、要チェックです。

【2〜1ヵ月前:原状回復工事の発注】

引越し2ヵ月前を目安に、あらかじめ決めていた工事業者へ原状回復の正式な発注を行います。

【2〜1ヵ月前:各種工事の実施】

オフィス移転まで1ヵ月程度の段階で、新オフィスの内装工事・電気やLAN設備の工事などを実施していきます。インターネットの工事は、想定以上に期間を要する場合もあるので、早めに動いておきましょう。

【2〜1ヵ月前:各種届出の提出】

各種届出の提出漏れにも注意が必要です。特に、法務局・税務署・年金事務所・労働基準監督署・公共職業安定所・消防署など官公庁への提出物は多いので忘れずに進めていきましょう。郵便局への転居届も、きちんと提出したか確認します。
効率の良い方法としては、チェックリストがオススメです。提出が必要な書類を事前にリスト化し、未提出と提出済が一目で分かるようにしておくと漏れなく進められます。

【1ヵ月前〜直前:少しずつ荷物を梱包&スムーズ移転へ!】

一般的に移転の1ヵ月前には引越し業者から梱包材が届くので、現事務所ではもう使わないものから少しずつ梱包作業を進めていきます。
そして1週間前には当日の分担確認を行い、余裕をもってスムーズな移転を達成しましょう!

新事務所のデザイン・レイアウトは、2つのポイントに注目!

こだわり家具でモチベーションアップ

新しい事務所のデザイン決定後は、そのコンセプトに合わせた家具選びがポイントです。
設置する家具によってオフィスの印象は大きく左右されるため、機能性だけでなくデザイン面からも検討することをオススメします。
特に注力しているスペースがある場合は、個性的でシンボリックな家具を目立たせて設置し、そのスペースを強調していくのも効果的です。
また、デスクの高さを目線より低めになるように設定することで、空間に余白が生まれ、スッキリおしゃれな印象に仕上げられます。天井が高く感じられるようにもなるので、圧迫感がなく、快適性が向上します。
さらに、休憩のリチャージスペースには足をのばして寝られるチェア、ミーティングスペースにはカフェのようなカウンターを設けるなど、家具を活用して働きやすさを高め、モチベーションアップにつなげ、事務所移転の効果を最大化していきましょう。

注目の新しい働き方「ABW」を意識

事務所の移転は、新しい働き方のひとつとして注目を集める「ABW(アクティビティベースドワーキング)」を導入する良いきっかけにもなります。
「ABW」は、固定の席を設定せず、ワーカーそれぞれの活動内容(アクティビティ)に合わせて最大のパフォーマンスを発揮できる環境(場所や時間)を選び働けるワークスタイル戦略です。
一人で集中したいとき、気軽に打ち合わせがしたいとき、休憩してリラックスしたいときなど、それぞれの内容に適した専用の環境を構築して展開していきます。
そのため、従来のデスクとイスを並べた執務席と会議室といったレイアウトではなく、1人で集中できるスペース、カジュアルなミーティングスペースに会議室、リフレッシュ・リラックスに特化したリチャージスペースなど、ワーカーの活動内容に合わせた細やかなゾーニングを行い、働きやすさにつなげていきます。

事務所移転の家具導入事例ご紹介

CASE1:株式会社ビットキー

「ライブショールーム」をテーマに、
体感型の空間づくりを実現

テクノロジーの力で革新を起こし続ける「株式会社ビットキー」の東京拠点が、2021年9月に移転オープン。「ライブショールーム」の考え方に基づいて構成され、全エリアを巡ることで同社のサービスやメッセージを自然に体感できます。また、カフェのような心地よさで誰もが憩うコミュニティスペースでは多様なコラボレーションが生まれ、オフィス空間の可能性を広げています。

●ラウンジエリアで1日を過ごすときに寄り添える家具というように、使用シーンを具体的にイメージして家具を選定
●憩いのコミュニティスペースには、カフェのように心地よく過ごせて話しやすく集まりやすい大きめのソファを設置
●チームの島ごとに分けた暖簾をくぐる執務エリアで帰属感アップ

CASE2:and roots 株式会社

フリーアドレススペースの効果を
最大化するゾーニングと家具選定

通信販売事業やWEBコンサルティング事業を展開しながら成長を続ける「and roots株式会社」のグループ企業の移転にともない、新たなオフィスづくりプロジェクトがスタート。
開放的で自由度の高いフリーアドレススペースを重視したゾーニングで、オフィス空間での多様なシーンに応えるレイアウト、コミュニケーションをスムーズにするレイアウトを実現しています。

●開放感がありながらも集中できる環境づくりのため、ほどよい緊張感と落ち着きが感じられる素材・色の家具をレイアウト
●オープンなスペースとは対照的に、木や間接照明の温かみを活かした半個室の高集中ブースも設置
●椅子とテーブルの脚を揃え、空間デザインのアクセントに

CASE3:株式会社 梓設計

4本のランウェイを通してゾーニング。
「ABW」を導入し、多様な働き方を創造。

1946年の創業以来、建築業界を牽引してきた「株式会社 梓設計」が、その原点とも言える場所「羽田」へ移転。5300㎡ものメガプレートに本社機能を集約した壮大な新社屋プロジェクトです。4本のランウェイ(滑走路)を縦横斜めに通してゾーニングし、「空港設計の梓」を体現。
ワークプレイスにおけるアクティビティ(活動内容)を細かく抽出した後、それぞれの内容に合わせた専用のエリア(ブレストスペース・会議室・集中ブース・ラウンジスペースなど)をレイアウトし、「ワーカー自らが働く環境を選びとれるオフィス空間」をカタチにしています。

●「ABW」を導入し、それぞれのアクティビティに合わせた専用のエリア(ブレストスペース・会議室・集中ブース・ラウンジスペースなど)をレイアウト
●縦横斜めに通った4本のランウェイ(滑走路)に公共空間としての役割が生まれ、「パブリックなランウェイ」と「特定の機能を備えた多様なエリア」といった構成に着地
●ブレストスペースに並ぶ「座り心地比較ソファ」で、飲食スペース向けやラウンジスペース向けなど、用途に合わせた6段階の座り心地を体感

(全体のまとめ)
やらなければならないことが多方面から押し寄せてくる事務所移転プロジェクトですが、事前に綿密な計画を立て、適したタイミングで着実に進めていくことができれば、社員のモチベーションやパフォーマンスが高まる大きなきっかけとなるでしょう。
今回ご紹介した内容をご覧いただき、少しでもお役に立てましたら幸いです。