アダルの工場に訪れ、ものづくりへの想いを確信。

小学生の頃に貯金箱コンクールで入選し、そこから一層ものづくりが好きになった。インテリア系の学校に進み、卒業後は内装業界で営業をしていたが、アダルの工場見学に訪れたことで手仕事によるものづくりに強く惹かれ、家具職人の道へ。入社して半年間でテーブル製作の基礎を身につけ、「5軸CNC加工機械」に挑戦することとなった。

「5軸CNC加工機械」とは、3次元に移動する刃物によって曲面や立体的な木材の削り出しが効率的にでき、テーブル天板の木口の縁張りも可能という特殊な機械。専用ソフトを使って平面の図面から3D図面を起こし、28種類もの刃を駆使して加工していく。ソフトの入力設定を少しでも誤っていると想定外の箇所を削ってしまい後戻りができないため、モニターで確認しながら慎重にシミュレーションを重ねる。

28種類もの刃物を用途に合わせて使い、3次元の加工を実現

い草ソファ「BOKU」の加工を機に、CNCとの向き合い方が大きく変化。

切削前に刃物の軌跡に問題がないか、動画でシミュレートする

手仕事の職人をイメージして入社した立石にとっては、その見慣れない難解な機械を担当することに戸惑いや不安もあったが、い草を活用したソファ「BOKU」の加工に携わり、意識が大きく変化していった。

「BOKU」は、肘から背の曲線も脚部の造形も独特で、3D図面に起こしてみると具現化の難しさがより際立った。試作を繰り返しながらパーツをひとつずつ仕上げていくうちに、人の手ではできない造形でも実現できること、そしてそれを寸分違わぬ美しさでいくつも生み出していけることに、気持ちの高まりを感じていた。「思い描いた通りのパーツが完成するたびに、こういうこともできるんだと感動しましたし、CNCの能力をもっと発揮できるように成長したいと感じました」と語る。

木組みなど後工程への理解も深め、CNCでできることを最大限に。

肘から背の曲線、脚部の独特な造形を実現した「BOKU」 

現在は、「5軸CNC加工機械」を最大限に使いこなせるよう、動画での研究や機械メーカー担当者へのヒアリングなど、様々な角度から技術向上を試みる日々。「CNCで可能な限りの加工をすることで、後工程の作業が進めやすくなるようにし、次のチームへつなげようと意識しています。

そのため、CNCそのものだけでなく、後工程についてもしっかりと学んでおくことが必要です。今後は、まだ経験したことのない木組みなどの作業にも携わり、後工程への理解も深めながらCNC加工に取り組んでいきたいですね」と微笑む。
CNCを活用すれば、人の手ではできない造形が実現できる。こういうことができる、こんなことまでできるという感動がモチベーションになる。常に目指しているのは、ずっと触れていたい心地よさ、ずっと使い続けたくなる家具づくり。手作業のその先へ、今日も家具の可能性を描き出していく。