丸天板加工の専門ではないが、自然と最初に相談が入るように。

製造1課 中村 英司 入社歴:28年

朝7時、工場に到着。シャッターを開け、電気をつけ、季節によっては扇風機のスイッチを入れ、始業の8時30分までに心身の状態を整えておくのが、彼の朝のルーティンだ。「仕事モードに切り替えるまでに時間がかかるので早めに出社しているんです」と笑うが、「丸天板の加工なら、まずは中村」と言っても過言ではないほどの技術力の持ち主である。

丸天板の製作を専門としている訳ではないのに、丸天板の製作依頼がある度、不思議と最初に相談が入る。基本的には中村が1人で加工し、100枚レベルでのオーダーの場合は、丸い天板の形状に合わせた縁の形状を彼が事前に調整してから分担していく。
仕事でのモットーは、「何枚になっても気を抜かず手を抜かず、ずっと同じ品質づくり」。そしてそれには、家具製作の道に進む前、生花店で働いていた頃の経験が大きく影響している。

天板1枚目も100枚目にも、同じ姿勢で向き合い続ける

花1本も、大きな花束も、すべて同じ姿勢で。

農業高校を卒業し、生花店へ就職。大きな花束の依頼もあれば、花1本を選ぶ依頼もあり、様々なオーダーに真っ直ぐ応え続ける中で、「どのような場合でも気を抜かず手を抜かず、ずっと同じ品質づくり」の意識が根づいた。
また、例えば20本の花で花束をつくる依頼があった場合、万が一思いどおりにスムーズにできなかったときのため、あらかじめ2本ほど多めに花を確保しておくやり方を続けていたが、尊敬するオーナーからの「20本なら20本で決める」という言葉を受け、「保険をかけるようなやり方はやめました」と語る。
常に同じ姿勢で取り組むこと、失敗したときの保険を用意するよりもまずは本番1回きりという気持ちで全力で臨むこと。生花店時代の経験が、クラフトマンとしての中村の土台を支えている。

何度も刃を研いで使い込まれた相棒の鉋(かんな)と、入社当社から27年愛用するカッター

先輩からの2択の教え、ずっとクラフトマンであるために。

アダルに入社後も、心に刻みつけた教えがある。「入社したばかりで若手だった頃、師匠のような存在の先輩に、もしもケガをしたらムチャクチャ頑張って挽回するか、すぐに職人をやめるかの2択と教えていただき・・・どっちも嫌だなと思って(笑)。どれだけ経験を重ねても、その教えがずっと心にあるから、ケガをしないことへの意識を高く保てていると思います」と話す。

入社して28年目、現在でもたびたび一人で反省会を行っている。「自分自身の中で思い込みで製作を進めてしまい、途中で寸法の間違いに気づくことがあります。ときには自分では気づかず、周りから指摘されることもあり、まだまだ修行中ですね」と語る中村。自身の弱さを分析し、徹底してストイックな姿勢を貫く。熟練職人と呼ばれるようになっても変わらない姿勢が、変わらない品質を支え続けている。