はじめに

2024年5月29日(水)から31日(金)に東京ビッグサイトで開催された『オルガテック東京2024』に出展し、多くの方にご好評をいただきました。当社は、オルガテック東京の初開催である2020年から3度目の出展となります。さらに、今回の出展において「ORGATEC TOKYO Awards」にて準グランプリを受賞しました。受賞理由の一つは、ブース資材の78%を家具内部材として再利用するというユニークなサステナビリティの取り組みです。昨年の永山祐子選考委員特別賞に続き、2年連続のアワード受賞となります。

近年、短期間の展示会出展のためにブースを製作し、その後廃棄することがサステナビリティの観点から問題視されています。当社では、2023年のオルガテック東京から「Use and Reuse」をコンセプトとして掲げ、ブース資材を展示会終了後に再利用することで、廃棄物削減の課題解決に取り組んでまいりました。

本記事では、オルガテック東京2024の後にブース資材を具体的にどのように再利用・再資源化したのかをご紹介いたします。

目次

  1. ブースデザインにおける3つの取り組み
  2. 会期中のブースの様子
  3. 閉会後の解体作業
  4. 【ブースから家具へ】資材の再利用
  5. 再利用実績について
  6. 今後の展望と抱負

1.ブースデザインにおける3つの取り組み

①サステナビリティと美しさの両立

ブースデザインは、昨年に引き続きスペインのデザインスタジオ、STONE DESIGNSとコラボレーションしました。建屋外観は1970年代にスペインで注目された建築家、ミゲル・フィサク氏の作品「Pascual de Juan House」からインスピレーションを受けています。

当時のスペインは経済的に不安定な中、才能ある建築家たちが安価で手に入りやすい材料を用いて新しいテクスチャや有機的な形状を作り出すことに挑戦していました。特にミゲル氏はコンクリートをプラスチックや木材などの異素材を型取りに使うことで、堅固で強靭なコンクリートを有機的で柔らかい印象にするユニークで美しい建築を生み出していました。

『限られた資源の中で、広く流通する素材を用い、美しく独創的なデザインを生み出す』という考え方は、持続可能性が叫ばれる現代にも通じるものです。

そこで、ブース設計は何か特別な素材を使用するのではなく、一般的な素材で資材再利用のしやすさを考慮したブース設計の検討をしました。

②循環しやすい素材の選定

ミゲル・フィサク氏の作品から受けたインスピレーションの下、自社工場の製造工程のなかでも普段から多用される素材をピックアップし、ブースデザインを行いました。様々な素材を集めサンプルをつくるなかで、ウレタン、チップウレタン、ベニヤを使用することが決まりました。

③【再利用率78%】資源の再利用効率を考えた設計

ブース建屋に使用した素材は無駄なく資源を再利用するため、3×6や4×8サイズのベニヤ板や、横幅をカットせず使用したウレタンなど、できるだけ規格サイズのまま使用しました。

2.会期中のブースの様子

当社のブースは、中央にウレタンとベニヤで構成された建屋を設置しました。

アダルのブース全体像

建屋の壁面は、家具のクッション材として使用される「ウレタン」を素材そのままの状態で使用する試みを行いました。

来場者からは、「展示会場でカフェのような建築物があったので驚いた」、「遠くから見たら硬い新素材に見えたけど、触れてみたらクッション性があってびっくりした」、「壁面が光に当たるとキラキラ光っていて綺麗、まさかウレタンとは思わなかった」などの感想をいただきました。

壁面のウレタンは糊を使用せずボタン締めのみで取り付けし、会期終了後はボタン締めを外せば容易に分解ができるようにしています。つまり、この

ボタン締めは、壁面のアクセントとしての装飾的役割とともに、再利用のしやすさという機能面にも配慮したデザインとなります。

商品展示台

商品の展示台には、ベニヤとチップウレタンを使用しました。展示台としてある程度の高さを出すため、底面のベニヤに芯材として廃棄予定の角材を設置し、その隙間にチップウレタンを何層にも重ねました。さらにその上にベニヤを被せ、角材に対しビスで留めています。 こちらも再利用のしやすさという観点で、チップウレタン同士は糊を一切使用していません。

3.閉会後の解体作業

壁面のボタン締めを外し、ウレタンを剥いでいきます。

ウレタンを全て外した建屋解体後の様子です。

解体後には福岡にあるアダルの総合工場へ資材が運び込まれました。

ブース設営から解体までを追った動画▼


4.【ブースから家具へ】資材の再利用

ブース壁面に使用したウレタンを使用して、サンプル商品の内部材やバネ下地やベルト下地のソファの緩衝材として再利用しています。


展示台を再利用する様子です。ベニヤとチップウレタンを解体し、再利用します。


展示台に使用したベニヤはカットし、「ファミレスベンチ」などと呼ばれるベンチソファの妻板(側面の板)として再利用します。


チップウレタンもウレタンと同様に、バネ下地やベルト下地のソファの木部に緩衝材として取り付け、再利用しています。

ウレタン・チップウレタン共に、座面など体に触れない部分、かつ品質に問題がない部分での再利用を行なっています。

5.再利用実績について

今回のブース再利用率は78%ですが、昨年と比較して、廃棄物量を27%削減しました。
さらに、昨年に引き続き「ORGATEC TOKYO Awards」にて準グランプリを受賞できたことは、当社の持続可能性への取り組みが評価された結果だと考えております。特に、ブースの設計段階から再利用を前提とした素材選定や設計が、他の出展者との差別化につながったと自負しております。

6. 今後の展望と抱負

当社では、今後も資源再利用の仕組みを強化し、さらなる環境負荷の低減を目指していきます。将来的にブース資材再利用率100%達成を目指し、サステナビリティのさらなる向上を図ります。また、次回展示会出展の際には、「ORGATEC TOKYO Awards」のグランプリを目指し、より革新的で持続可能なブースデザインの提案ができるよう努めます。

この目標を達成するために、内部でのプロセス改善と資材管理の効率化を図り、素材の再利用を最大限に活用していきます。皆様のご支援とご協力を賜りながら、引き続き環境に優しい製品とサービスの提供に努めてまいります。